製造業の秘密保持契約書|図面と工程を守る条項
公開 2026年9月3日/更新 2026年10月3日
目次11項目
- 1製造業の秘密保持契約書とは何を守る書面か
- 渡した情報の範囲をそろえる
- 図面の扱いを決められる
- 見積りの段階でも使える
- 2製造業の秘密保持契約書で何を秘密の対象にするか
- 口頭で伝えた内容の扱いを決める
- 工場の見学で得た情報を含める
- 例外になる情報を書く
- 3製造業の秘密保持契約書の期間をどうするか
- 終了後も続く期間を書く
- 図面の返却か廃棄を決める
- 複製の扱いを書く
- 4製造業の秘密保持契約書を外注先と結ぶとき
- 再委託の扱いを決める
- 顧客との契約と突き合わせる
- 渡した図面を記録する
- 5製造業の秘密保持契約書と社内の管理のつなぎ方
- 図面の受け渡しを記録する
- 見られる人を限る
- 従業員との誓約書とつなげる
- 6製造業の秘密保持契約書と従業員との取り決め
- 入社時に確認する
- 退職時にもう一度確認する
- 持ち出しの経路を決めておく
- 会社の契約と内容をそろえる
- 教育で伝える
- 7製造業の秘密保持契約書でつまずきやすいところ
- 情報を渡す前に結ぶ
- 例外を書いて実際に守れる形にする
- 締結した契約を一覧で持つ
- 8製造業の秘密保持契約書を終わらせるとき
- 受け渡しの記録から範囲を出す
- 社内の複製まで処理する
- 終了後も続く義務を確かめる
- 9製造業の秘密保持契約書にかかわる最近の動き(2026年10月時点)
- 10製造業の秘密保持契約書に出てくる用語
- 11製造業の秘密保持契約書と一緒に押さえておきたいこと
- 秘密保持契約書に印紙は要るか
- 従業員との秘密保持は社内の管理とセットにする
- 図面やCADデータの提供を求められたとき
見積りの依頼を受けて図面を見て、それから契約書を交わす。この順序だと、契約の書き方によっては最初に見た図面が対象に入りません。
一般には、情報を渡す前に結ぶのが基本の形とされています。それでも、実務では急ぎの見積りが先に走ることがあります。
とはいえ、後から結ぶ場合も、対象にさかのぼって含める書き方があります。いつからの情報を対象にするかを書いておくと、その穴が埋まります。
ポイントはここです。製造業の秘密保持契約書は、情報を渡す前に結ぶことで守る範囲がそろいます。
ここでは、何を守る書面なのか、秘密の対象、期間の決め方、そして社内の管理とのつなぎ方までを順に整理します。
製造業の秘密保持契約書とは何を守る書面か
製造業の秘密保持契約書は、取引の中でやり取りする情報を守る書面です。図面、加工の条件、顧客の情報が対象になります。
そのうえで、守る範囲を互いに確かめるための書面でもあります。何が秘密なのかの認識が、会社によって違うことがあります。
- 設計の情報図面と仕様
- 製造の情報加工条件と工程
- 取引の情報顧客と価格
3つとも、製造の取引では日常的にやり取りします。そのうえで、範囲を書面にすると認識がそろいます。
渡した情報の範囲をそろえる
こちらが秘密だと思っている情報を、相手はそう思っていないことがあります。工程の構成や加工の条件は、その典型です。
対象の範囲を書いておくと、食い違いません。
図面の扱いを決められる
図面は、渡した後の扱いが問題になります。複製してよいか、社内の誰まで見てよいか、返すのか。
そのうえで、契約書にこれらを書きます。決めていないと、相手の判断で扱われます。
改訂した図面も対象になることを、書いておきます。
見積りの段階でも使える
正式な取引が始まる前から、情報のやり取りは始まります。見積りのために図面を渡す場面です。
そのうえで、この段階で結ぶ形にします。取引にならなかった場合も、渡した情報は残ります。
見積りの依頼の手続きに、締結を組み込みます。
製造業の秘密保持契約書で何を秘密の対象にするか
製造業の秘密保持契約書では、対象を具体的に書きます。「営業秘密」とだけ書くと、何が入るかが分かりません。
- 図面と仕様書書面で残る
- 加工の条件温度や送りなど
- 工程の構成見学で伝わる
- 顧客と価格取引の情報
- 不良の情報双方に関わる
- 口頭で伝えた内容扱いを決める
最初の2つは、書面やデータとして残るので分かりやすくなります。そのうえで、後ろに行くほど、扱いを決めておく必要があります。
| 対象 | 含める形 | 気をつけるところ |
|---|---|---|
| 図面と仕様書 | 明示して含める | 改訂も対象になる |
| 加工の条件 | 明示して含める | 温度や送りなど |
| 治具と型の構造 | 明示して含める | 写真も対象に |
| 工程の構成 | 明示して含める | 見学での取得も |
| 顧客と価格 | 明示して含める | 双方の情報 |
| 不良と是正の情報 | 扱いを決める | 品質報告書の内容 |
| 口頭で伝えた内容 | 扱いを決める | 記録の残し方 |
上の5つは、明示して含める形にできます。そのうえで、下の2つは扱い方を決めておきます。
口頭で伝えた内容の扱いを決める
打ち合わせで話した内容は、書面が残りません。後から、秘密の対象だったかどうかが分かれます。
そのうえで、口頭で伝えたものを対象にするなら、方法を決めます。伝えた後、一定の期間内に書面で秘密だと示す形がよく使われます。
決めていないと、口頭の部分だけが宙に浮きます。
工場の見学で得た情報を含める
取引先が工場を見学することがあります。見ただけで、工程の構成や設備の配置が伝わります。
そのうえで、見学で得た情報も対象に含めます。書面で渡していないから対象外、という解釈を避けます。
撮影の可否も、あわせて決めておきます。
例外になる情報を書く
すべてを対象にすると、相手が守れません。すでに公になっている情報や、独自に得た情報は外します。
例外を書いておくと、実際に使える契約になります。
製造業の秘密保持契約書の期間をどうするか
製造業の秘密保持契約書は、取引が終わった後も効き続けます。どこまで続けるかを、先に決めます。
- 1 締結 情報を渡す前に
- 2 取引の期間中 契約が続く間
- 3 取引の終了 終わりを確かめる
- 4 返却か廃棄 終了の時点で
- 5 終了後の期間 情報の性質で年数を決める
取引の期間と、終了後の期間を分けて考えます。そのうえで、返却は終了の時点で行います。
終了後も続く期間を書く
取引が終わった時点で義務も終わると、情報が守られません。終了後も一定の期間、義務が続く形にします。
そのうえで、期間は情報の性質で変えます。価格の情報は短く、加工の条件は長く。
長すぎる期間は、相手が受け入れにくくなります。
図面の返却か廃棄を決める
取引が終わったとき、渡した図面をどうするか。返してもらうか、廃棄してもらうか。
返却か廃棄を決めておくと、終わり方がそろいます。
複製の扱いを書く
渡した図面が複製されていると、原本を返しても残ります。複製を認めるかどうかを書きます。
そのうえで、認める場合は範囲を決めます。社内の作業に必要な部数まで、という書き方があります。
複製したものも、返却か廃棄の対象になることを書きます。
製造業の秘密保持契約書を外注先と結ぶとき
製造業の秘密保持契約書は、顧客と結ぶ場合と外注先と結ぶ場合で立場が逆になります。外注先とは、情報を渡す側になります。
- 渡す側の内容になっているか はい次へ いいえ立場に合わせて直す
- さらに別の会社へ出すことを認めるか はい条件を書く いいえ禁じる条項を入れる
- 図面の返却か廃棄を決めたか はい次へ いいえ終了時の扱いを書く
- 顧客との契約と矛盾しないか はい結べる形 いいえ顧客の条件を確かめる
立場と再委託と顧客の条件を順に確かめる
最初の確認が、いちばん見落とされます。そのうえで、顧客から受け取った図面を渡す場合は最後の確認が要ります。
再委託の扱いを決める
外注先が、さらに別の会社へ出すことがあります。そこまで情報が届くと、追いきれません。
再委託の扱いを決めておくと、情報の行き先が追えます。
顧客との契約と突き合わせる
顧客から受け取った図面を、外注先へ渡す場面があります。顧客との契約で、第三者への開示が禁じられていることがあります。
そのうえで、渡す前に確かめます。承諾を得る手続きが要る場合もあります。
外注先とも同じ条件の契約を結ぶ形が求められることがあります。
渡した図面を記録する
いつ、どの図面を、誰に渡したか。記録が無いと、返してもらう範囲が分かりません。
そのうえで、改訂した図面を渡した記録も残します。古い版が相手に残っていると、間違ったものが作られます。
受け渡しの記録は、返却のときにそのまま使えます。
製造業の秘密保持契約書と社内の管理のつなぎ方
製造業の秘密保持契約書を結んでも、社内で管理されなければ守れません。契約で決めることと、実際に行うことを対にします。
契約で決めること
- 対象と例外
- 期間と終了後
- 複製と再委託
- 返却か廃棄
社内で行うこと
- 図面の受け渡しの記録
- 見られる人を限る
- 複製の管理
- 終了時の返却
左は書面の中身です。そのうえで、右は日々の運用になります。
図面の受け渡しを記録する
誰に何を渡したかの記録を、社内で持ちます。電子で送った場合も、記録に残します。
そのうえで、受け取った側の確認も取ります。届いていなかった、間違った版を送った、といったことが防げます。
契約が終わったとき、この記録から返却の範囲が出ます。
見られる人を限る
顧客から受け取った図面を、社内の誰でも見られる状態にしないようにします。共有のフォルダに置くと、範囲が広がります。
見られる人を限ると、外に出る経路が減ります。
従業員との誓約書とつなげる
会社どうしで契約を結んでも、実際に情報を扱うのは従業員です。従業員との取り決めが無いと、そこで切れます。
そのうえで、入社時に誓約書を取ります。職務で知った情報を外に出さない、という内容です。
会社の契約と、内容がつながる形にします。
製造業の秘密保持契約書と従業員との取り決め
製造業の秘密保持契約書には、会社どうしのものと従業員とのものがあります。対象や及ぶ範囲が違います。
会社どうしの契約
- 取引の相手と結ぶ
- 図面と工程が対象
- 期間と返却を決める
- 再委託の扱いを書く
従業員との取り決め
- 入社時と退職時に確認
- 職務で知った情報が対象
- 在職中と退職後に及ぶ
- 持ち出しの禁止を書く
左は取引の相手との書面です。そのうえで、右は社内で交わす書面になります。
入社時に確認する
入社の手続きの中で、誓約書を取ります。雇用契約書と同じタイミングです。
そのうえで、内容を説明します。署名だけを取って中身を伝えないと、意味が伝わりません。
何が秘密の対象なのかを、具体的に伝えます。図面、加工の条件、顧客の名前。
製造の現場では、日常の作業そのものが対象になります。
退職時にもう一度確認する
退職のときに、改めて確認します。在職中に知った情報を、退職後も外に出さない。
そのうえで、持ち出したものが無いかを確かめます。図面の写し、データ、記録した手帳。
返却の手続きを、退職の手続きに入れます。貸与品の返却と同じ扱いにします。
競合する会社へ移る場合も出ます。そのとき、何が制限されるかを伝えておきます。
持ち出しの経路を決めておく
情報が外に出る経路は、いくつかあります。紙で持ち出す、データで送る、写真を撮る。
そのうえで、それぞれに決めごとを置きます。図面の持ち出しには承認が要る、といった形です。
現場での撮影も、決めておきます。不良の記録として写真を撮る場面があります。
そのうえで、撮った写真の扱いも決めます。個人の端末に残ったままになることがあります。
外部へ送る手段も限ります。私用のメールで送る形は、追えなくなります。
会社の契約と内容をそろえる
顧客との契約で決めた条件が、従業員に伝わっていないことがあります。契約では禁じているのに、現場で行われている状態です。
そのうえで、契約の内容を現場の決めごとに落とします。撮影の可否、図面の複製、外注先への開示。
契約書をそのまま渡しても、伝わりません。現場の言葉に直して伝えます。
顧客ごとに条件が違う場合は、その違いも伝えます。一律の扱いにすると、厳しいほうに合わせることになります。
教育で伝える
誓約書を取っただけでは、日々の判断につながりません。教育の場で、具体的な場面を伝えます。
そのうえで、実際に起きやすい場面を扱います。取引先の名前を別の相手に話す、図面を持ち帰る。
悪意が無くても起きることを伝えます。仕事の話として、外で話してしまう場面があります。
家族や友人に話す場面も、対象になります。どこまでが話してよい範囲かを示します。
新しく入った人には、早い段階で伝えます。入って何か月も経ってからでは、すでに知っています。
そのうえで、定期的にも繰り返します。一度伝えただけでは、時間とともに薄れます。
安全衛生の教育と同じ場で扱う形もあります。別に時間を取らなくて済みます。
そのうえで、伝えた記録を残します。いつ誰に伝えたかが分かる形にします。
外注先の作業者が構内に入る場合も、同じことが要ります。自社の従業員だけを対象にすると、抜けます。
そのうえで、外注先の会社を通じて伝えます。構内で守ってもらう決めごとを、書面にして渡します。
見学者にも、同じ考え方が要ります。撮影の可否を入口で伝えます。
製造業の秘密保持契約書でつまずきやすいところ
製造業の秘密保持契約書は、つまずく場所が決まっています。どれも、事前に手を打てる部分です。
- 結ぶのが遅い図面を渡した後
- 対象が広すぎる例外がなく守れない
- 社内で管理されない契約だけが残る
3つとも、契約の前後で起きます。そのうえで、いちばん多いのは最初です。
情報を渡す前に結ぶ
見積りのために図面を受け取った後で契約を結ぶと、書き方によってはその図面が対象から外れます。渡す前に結ぶ形にします。
情報を渡す前に結ぶと、対象がそろいます。
例外を書いて実際に守れる形にする
すべてを秘密の対象にすると、相手が守れません。守れない契約は、結んでも動きません。
そのうえで、例外を書きます。すでに公になっている情報、独自に開発した情報。
例外があると、対象がはっきりします。
締結した契約を一覧で持つ
どの会社と、いつ結んだか。一覧が無いと、結んでいるかどうかも分かりません。
そのうえで、期間の終わりも一覧に入れます。取引が続いているのに契約が切れていることがあります。
更新の時期が来たら、内容も見直します。
製造業の秘密保持契約書を終わらせるとき
製造業の秘密保持契約書は、取引が終わったときに処理が要ります。返却と廃棄を、記録に沿って進めます。
- 1 取引の終了 契約の終わりを確認
- 2 返却の範囲 記録と突き合わせる
- 3 返却か廃棄 契約の定めに従う
- 4 廃棄の証明 求められる場合
- 5 複製の処理 社内の複製も
- 6 継続する義務 終了後の期間
記録があると、2番目の作業が進みます。そのうえで、複製まで含めて処理します。
受け渡しの記録から範囲を出す
何を返すのかは、渡した記録から出します。記憶で進めると、抜けます。
そのうえで、改訂で差し替えた分も確かめます。古い版が残っていることがあります。
記録と突き合わせると、範囲が確定します。
社内の複製まで処理する
原本を返しても、複製が社内に残ります。作業のために取った写し、データの写し。
複製まで処理すると、終わりがそろいます。
終了後も続く義務を確かめる
契約が終わっても、秘密を守る義務は続きます。何年続くかを、契約書で確かめます。
そのうえで、社内にも伝えます。取引が終わったから話してよい、という判断が起きます。
終わった取引の情報も、期間の間は対象のままです。
製造業の秘密保持契約書にかかわる最近の動き(2026年10月時点)
製造業の秘密保持契約書は、決まった様式が法令で定められているわけではありません。そのうえで、図面やノウハウの取引をめぐる国の指針と、ひな形がここ数年で何度も見直されています。
| 時期 | 動き | 根拠 |
|---|---|---|
| 2024年4月1日 | 改正不正競争防止法が施行された。営業秘密と限定提供データの保護が強められ、国外での営業秘密の侵害にも日本の裁判所に訴えられることが明確になった | 経済産業省 |
| 2024年10月 | 中小企業庁が「知的財産取引に関するガイドライン」と契約書のひな形を改正した。第三者との知財の紛争の責任を、受託側に一方的に負わせないためのモデル条項が加わった | 中小企業庁 |
| 2026年1月 | 取適法の施行に合わせて、同じガイドラインとひな形の「下請」などの用語が「委託事業者」などに改められた | 中小企業庁 |
| 2026年6月24日 | 公正取引委員会・中小企業庁・特許庁が「知的財産権・ノウハウ・データの適切な取引のための優越的地位の濫用等に関する指針」と、附属の契約書ひな形を公表した。同じ日に、取適法の運用基準の改正案の意見募集も始まった | 経済産業省・公正取引委員会 |
ポイントはここです。国のひな形は、両方が秘密を守る義務を負い、守るべき秘密を互いに指定する形を基本にしています。自社の様式を見直すときは、相手だけが義務を負う形になっていないかを、ひな形と並べて確かめられます。
出典:経済産業省:不正競争防止法 直近の改正(令和5年)、中小企業庁:知的財産取引に関するガイドライン・契約書のひな形について、経済産業省:知的財産権・ノウハウ・データの適切な取引のための優越的地位の濫用等に関する指針及び契約書ひな形の公表、e-Gov法令検索:不正競争防止法
確認日は2026年10月3日です。ひな形と指針の内容は中小企業庁の取引課、取引の法律の扱いは公正取引委員会、営業秘密の扱いは経済産業省の知的財産政策室で確かめられます。
製造業の秘密保持契約書に出てくる用語
製造業の秘密保持契約書に出てくる用語には、法律で定義された語と、契約の慣習で使われている語が混ざっています。どちらの語なのかを分けておくと、条項を読むときに迷いません。
| 用語 | 意味 | 出典 |
|---|---|---|
| 営業秘密 | 秘密として管理されている生産方法や販売方法など、事業に役立つ技術上・営業上の情報で、公然と知られていないもの | 不正競争防止法第2条第6項 |
| 限定提供データ | 業として特定の者に提供するため、電子的な方法で相当量ためて管理している技術上・営業上の情報 | 同法第2条第7項 |
| 秘密情報 | 契約で秘密として扱うと決めた情報。範囲は契約ごとに決める | 法令上の定義はない |
| 開示者・受領者 | 情報を渡す側と受け取る側 | 法令上の定義はない |
| 再委託 | 受託した仕事を、さらに別の会社に出すこと | 法令上の定義はない |
| 残存条項 | 契約が終わった後も効力が続くと決めた条項 | 法令上の定義はない |
| 委託事業者・中小受託事業者 | 取適法で、仕事を出す側と受ける側を指す語 | 取適法第2条 |
ポイントはここです。契約の「秘密情報」と、法律の「営業秘密」は同じ範囲とは限りません。契約で秘密情報と決めていても、社内で秘密として管理していなければ、法律の保護を受けにくくなります。
製造業の秘密保持契約書と一緒に押さえておきたいこと
製造業の秘密保持契約書について調べると、ひな形やテンプレートはよく見つかります。そのうえで、実務で聞かれやすいのは、印紙の要否、従業員との取り決め、図面やデータの提供を求められたときの3つです。
秘密保持契約書に印紙は要るか
印紙税がかかるのは、印紙税法の課税物件表に載っている文書だけとされています(国税庁 タックスアンサー No.7100)。秘密を守ることだけを定めた契約書は、表のどれにも当たらないと考えられることが多くあります。
ただし、同じ書面に代金の支払いや請負、継続した取引の条件まで書くと、判断が変わることがあります。迷うときは、書面の案を持って所轄の税務署に確かめられます。
従業員との秘密保持は社内の管理とセットにする
従業員との秘密保持の誓約書だけでは、情報が法律で守られるとは限りません。不正競争防止法の営業秘密に当たるには、秘密として管理されていることが条件の1つになります(同法第2条第6項)。
図面の棚に鍵をかける、データに見られる人を設定する、表紙に「秘」と書く。こうした管理と誓約書がそろっていると、持ち出しがあったときに守られやすくなります。
図面やCADデータの提供を求められたとき
中小企業庁のガイドラインは、製造委託の目的物になっていない金型の設計図面やCADデータなどの提供を、相手の意に反して強制しないことを挙げています。監査や品質保証のために秘密情報の開示を受ける場合も、必要な箇所をあらかじめ明確にすることとされています。
提供を求められたときは、目的と範囲と対価を書面で確かめると、後から食い違いません。秘密保持契約書に「目的外の使用を禁じる」条項を入れておくと、渡した後の使い道も限れます。
様式は秘密保持契約書(NDA)テンプレートからダウンロードできます。変更の連絡は変更点連絡書、体制の書面は品質マニュアルにまとめています。

よくある質問
秘密保持契約書は取引の前に結ぶのですか。
見積りの段階で図面を受け取る場面があるため、その前に結ぶ形が広く使われています。図面を渡した後では、渡した情報が対象に含まれないことがあります。取引が成立しなかった場合の扱いも書いておくと安心です。
外注先にも同じ内容で結べばよいですか。
自社が受け取る側と渡す側で、立場が変わります。外注先に図面を渡す場合は、自社が渡す側の内容を確かめます。さらに別の会社へ出すことを認めるかどうかも、条項で決めておく形になります。
期間はどのくらいにするものですか。
取引の期間に加えて、終了後も一定の年数を続ける形が広く使われています。図面や加工条件は取引が終わっても価値が残るため、期間を短くしすぎると守れません。年数は取引の内容によって変わります。